てんかん重積の予後:治療を遅らせる理由はない

てんかん重積の予後:治療を遅らせる理由はない
てんかん重積状態(status epilepticus: SE)は重篤な神経救急疾患の一つです。
なぜ重篤かと言えば、重積状態が長く続くと高次脳機能障害などの神経障害が後遺する可能性が高く、また重症なS Eであれば死亡率も決して低くありません。
30分以上続くS Eでは死亡率が4割弱程度あるという報告もあります。よって、てんかん重積状態の治療介入を遅らせる理由はどこにもありません。
てんかん重積状態については、5分以上続いた状態を「早期のてんかん重積状態(early SE)」と呼び、30分以上続いた場合には「確定したてんかん重積状態(established SE)」と呼びます。
つまり遅くとも30分以内に止めなければなりません。火事と同様に鎮火は初期の方が容易であり、時間が経って燃え広がってしまいますと鎮火活動も難渋します。ちなみに重積ではない、通常のてんかん発作での「けいれん発作」は2分以内に自然頓挫することがほとんどです。
ではどのようなてんかん重積の予後が不良なのか?というclinical questionに基づいて、予後の予測のためのスコアリングなどを報告した論文もあります。
今回、紹介する論文では、重積の急性期のMRI画像所見の違いで予後に違いはあるのかを検証しています。
重積の急性期ではこのような側頭部内側の異常信号がしばしば見られます。
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そして両側性に異常信号が見られることもあります
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そして重症例では、重積後の慢性期でのMRIフォローにて、脳の萎縮が進行したことも画像上明らかです。
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Gd造影での評価では、急性期ではleptomeningeal enhancementを認める症例があります。
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この所見はB B B(血液脳関門)の破綻を示唆する重要な所見であり、この所見を認めた重積は転帰不良であったことをこの論文では報告しています。
以下のように、このleptomeningeal enhancementがあった症例(赤丸)は、軒並み「Glasgow Outcome Scale score<3」で、かつ「薬剤抵抗性のS E」だったという結果でした。 ;oh-p
強固なSEでは深鎮静でもなかなか重責が解除されず、強力な免疫治療を併用せねばならないこともしばしばあります。
ただし既存の抗神経抗体が全て陰性の自己免疫性急性脳炎もあり、診断と治療は非常に難しいのですが、あらゆるパラメーターで持って評価し適宜判断していくしかありません。
参考文献:
Epilepsia. 2020;61:1735–1748.
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