妊娠とてんかん:抗てんかん薬、催奇形性、血中濃度

妊娠可能な年齢にある女性の「てんかん」患者さんについてです。
今回は、大事なことだけ簡単にまとめました。
<計画妊娠が望ましい>
妊娠可能な女性に「てんかん」がある場合で、妊娠を希望している状況であれば「計画妊娠」が勧められます(大事です)。
その根拠は
1. 妊娠中に発作が増加する可能性がある
2. 妊娠中の発作(特に大きな発作)は、「胎児の低酸素に陥るリスクや、母体の早流産のリスク」になることも
3. てんかん合併妊娠はそうでない場合と比較して、母体死亡リスクが高い
4. 妊娠期間中に特化した薬剤の選択や用量調整がある
からです。
<妊娠中に発作が増加するのか?>
全身けいれん発作などがあった場合には、胎児の低酸素に陥るリスクや、母体の早流産のリスクとなる可能性があるため、
妊娠期間中は、特に発作のコントロールが重要となりますので、発作が十分コントロールできている状況で妊娠する方が、そうでない状況での妊娠より安心だといえます。
一般的には
妊娠中にてんかん発作の頻度が増える割合:約2割
妊娠中にてんかん発作の頻度が変わらない割合:約7割

と言われており、一般的には、発作が増えない可能性の方が高いのではありますが、約2割で発作は増えるとされています
<妊娠中のてんかんの治療>
一般的なてんかんの治療に加えて、以下の点を留意する必要があります
1) 可能な限り単剤の抗てんかん薬で
2) 催奇形性の少ない抗てんかん薬で
3) 用量は可能であれば必要最低量
4) 妊娠中の血中濃度変化には留意し
5) 葉酸補充も忘れない
このような状況を、妊娠前にすでに達成しておくということが、つまり計画妊娠)です。
つまり、催奇形性の少ない単剤の抗てんかん薬で、発作が十分コントロールできていることを事前に確認した上で、妊娠する方ということは、そうでない状況より「より安心できる妊娠」につながる大事な準備なのだといえます。
<抗てんかん薬での催奇形性>
抗てんかん薬は催奇形性に注意が必要な薬剤です。一般人口における催奇形性は約2〜5%とされています。
抗てんかん薬での催奇形性については、報告により多少のばらつきはありますが、大まかには表に記載した可能性が報告されています。
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今回は、使用頻度の高い薬剤のみを紹介しています。VPA(バルプロ酸)、CBZ(カルバマゼピン)、LEV(レベチラセタム)、LTG(ラモトリギン)を押さえておくことが大事だと思います。
注意として、催奇形性のリスクを示す数値は、様々な観察研究の数値の組み合わせなので、それぞれの数値の直接比較は避ける必要があります。
催奇形性には、心臓奇形(心室中隔欠損など)、二分脊椎、尿道下裂、口唇口蓋裂などが主に含まれます。
<バルプロ酸(VPA)には注意>
抗てんかん薬の中ではバルプロ酸(VPA)が最も催奇形性が高いとされています。
妊娠可能な年齢にある女性では
可能ならバルプロ酸を避ける
・ バルプロ酸でなければいけないときには、可能な限り用量を減らす(800 mgや1000 mg/dayを超えない)
・ バルプロ酸でなければいけないときには、併用を避ける(CBZやTPMなど)
<妊娠中の抗てんかん薬の血中濃度の注意点>
1. クリアランスの高い薬剤は、血中濃度の低下を来たしやすいので、妊娠中の血中濃度モニタリングが特に必要
   つまり、LTGとLEVは血中濃度が妊娠中に低下しやすいため、適宜モニタリングを
   一方、VPAやCBZは血中濃度が妊娠中に低下しにくい
2. 蛋白結合率の高い薬剤を把握しておく
  (遊離型のことを考慮すれば)血中濃度の推移が実際のAED作用を直接反映していない可能性も考慮した上で、
   血中濃度の推移を評価し、AED用量変更する
References:
Lancet Neurol. 2011;10
Lancet Neurol. 2013;12
Epilepsia. 2009; 50
Neurology 78, 1692-1699, 2012
Neurology 80, 400-405, 2013
J Neurol Neurosurg Psychiatry 84, e2, 2013
Seizure 2015, 28
など
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