重積発作の治療は急げ!(10分以内の治療開始)

てんかん重積状態の話
重積(SE:status epilepticus)とは
「発作がある程度の長さ持続するか,または短い発作でも反復し,その間の意識の回復はないもの」と定義される.
従来はその持続時間は30分以上とされていましたが,SEによる障害の重篤さや薬剤の進歩により30分という長さは疑問視されるようになりました。
最近では、「5分以上持続するか完全な意識の回復学発作を繰り返す状態」と臨床的にはg定義されるようになり、神経領域の緊急疾患として迅速な対応が要求されています。
<重積に関して分かっていること>
1)治療は早いほうがよい
・もちろん、治療開始は早いほうがよく
・搬入された場合であれば、病着後5−10分以内の治療開始が推奨されています
(治療開始は点滴注射での「抗けいれん剤」を用います)
2)重積は死亡とも関連する神経救急病態
・短期的な死亡率:3−9%(short-term mortality)
・長期的な死亡率:7%(long-term mortality)
3)初期治療で効果が乏しい場合
・2nd line:非ベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬の投与
・病着後10−20分以内
<重積治療の効果で分かっていないこと>
治療介入が早いほうが、早期治療介入がoutcome(死亡率)の改善につながるのかどうかは十分検証されていない
そこで、次のようなtitleの論文がJAMA neurologyから報告されている
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この研究は他施設・前向き観察研究で
SEで搬入された患者(小児患者)に対してprotocolにそったSEの初期治療を行い
治療介入の開始時間と、outcomeの関連性を評価しました。
結果としては
治療介入が遅れた場合(初期治療としてのベンゾジアゼピン系の投与に搬入後10分以上要した場合)
・死亡率
・3rd line治療の必要性
・重積発作期間の長さ
・頻回の血圧低下

と関連した。
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初期治療が遅れれば、2nd lineの治療も遅れ、最終的には3rd lineとしての麻酔薬の持続静脈内投与による鎮静を要するようになり、かつ転機不良(死亡)と関連したという結果が示されている。
この論文は小児が対象で、死亡例については乳幼児も含まれており、そのまま成人てんかんに当てはめることはできないが、SEの治療介入が早いに越したことは言うまでもない。5−10分以内に早期の治療介入を行うべきである姿勢を忘れないことは共通事項と言える。
実臨床では、
治療介入が早い=末梢ルート(点滴ルート確保)に要する時間が短い
が大きな鍵になるかと思います。ルート確保に時間がかかれば、どうしても、治療介入が遅れてしまいますし、けいれん中でのルート確保はしばしば難しく、危険でもあります。そのような場合には、ベンゾジアゼピン系(diazepamなど)の注腸投与も考慮します。
References
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Brophy GM, et al.: Guidelines for the evaluation and management of status epilepticus. Neurocrit Care. 2012;17(1):3-23.
Brophy GM, Bell R, Claassen J, et al; Neurocritical Care Society Status Epilepticus GuidelineWriting
Committee. Guidelines for the evaluation and management of status epilepticus. Neurocrit Care.
2012;17(1):3-23.
Wilkes R, Tasker RC. Pediatric intensive care treatment of uncontrolled status epilepticus. Crit
Care Clin. 2013;29(2):239-257.
Glauser T, Shinnar S, Gloss D, et al. Evidence-based guideline: treatment of convulsive status epilepticus in children and adults: report of the Guideline Committee of the American Epilepsy Society. Epilepsy Curr. 2016;16(1):48-61
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