ワクチン摂取でてんかん発作は悪化するのか?
ワクチン摂取後の発作の悪化(seizure worsening)は海外から既にいつくも報告がなされていましたが、日本でのデータがなかったので集計してみました。
今回の論文の結論
結論として、てんかん患者では稀ではあるものの、一部で摂取後に発作が悪しうるものの、その頻度はとても低く、また悪化したとしても一過性であり、最終的な転帰に影響は及ぼさないと思われる結果でした。
つまり、個々における「ワクチン摂取の必要性」の議論について、発作が悪化するかもしれない?という懸念では議論すべきではない、と思います。
調査内容
どのような調査をしたかというと、具体的には発作悪化の頻度について2つの手法で調査しました
1)広島県内の3施設でのてんかん専門外来でのclosedな問診
2)全国の一般外来でのopen questionでの調査(患者が自ら発作の悪化を申告した頻度)
調査の結果
その調査結果ですが
1)専門外来では5.7%の頻度で発作悪化あり(難治性の側頭葉てんかんと関連)
2)全国調査では5000名以上の外来患者データを集計し、自発的な発作悪化の報告はわずかに0.4%
発作悪化症例の特徴
専門外来で確認ができた発作の悪化した症例については、
・悪化は全て一過性で
・6カ月後の転帰に影響はなかった
・発作の悪化は、難治や焦点てんかん(TLE)に関連していたので、TLEでは発作に少し注意してねというメッセージはあるかもしれない
データ収集を始めたのが2022年1月。専門外来のデータを集計し終えたのが3月末で、全国調査は5月頃に集計が終了しました。論文については、今回は大学院生に筆頭著者になってもらいスムーズに進んでいましたが、reviseのメールが届いているのを私が見落としており、2023年の論文になってしまいました…
Reference
Epilepsy & Behavior, 2023, doi.org/10.1016/j.yebeh.2022.109070
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