自己免疫性てんかんは、近年注目されています。
・ 抗てんかん薬(anti-epileptic drug:AED)のみがてんかんの内科的治療の唯一の治療方法
・ AEDで難治となる症例の場合は、てんかん外科治療を検討する
というのが、従前のてんかん治療の原理原則でした。
ところが、近年、
自己免疫性てんかん
という疾患概念が注目され、てんかんの内科治療には、AED内服だけではなく、
ステロイドなど免疫治療が有効となる場合もあることが知られるようになり、てんかん診療の診断や治療の幅は確実に広がりました。
自己免疫性てんかんとは
免疫介在性脳炎により、てんかん原性を獲得(あるいは獲得過程)し、臨床的なてんかん発作を生じる状態のこと。
免疫介在性脳炎は、急性発症の場合は、意識障害、発熱、頭痛、精神症状といった典型的な脳炎症状を呈することが多いですが、亜急性や慢性に発症・経過することもあり、精神症状やてんかん発作症状のみを呈する場合もあり、多彩な臨床像を有します。
てんかん発作を呈する自己免疫性脳炎=自己免疫性てんかん
という認識でよいかと思います。
<分かっていること>
1)自己免疫性てんかんの患者さんの臨床的特徴
MRIでは側頭葉内側の信号変化を認めることがあります。
扁桃体は腫れぼったくなっており(MRI右図)、炎症性変化を示唆しそうです。
2)自己免疫性の病態に関与する自己抗体(抗神経抗体)の存在
3)治療には抗てんかん薬のみでなく、免疫治療を追加することで、良好な経過が得られる場合がある
<分かっていないこと>
1)自己免疫性てんかんの診断基準は確立されていません(世界基準でコンセンサスの得られた診断フローチャートはまだありません)。
2)未知の抗神経抗体はまだ存在しえます(既知の抗体陰性だからといって、自己免疫性てんかんの除外はできません)
3)治療、適応
治療法として、ステロイドや免疫グロブリン療法など有効例の報告はありますが、
・ RCTで確立された治療法はありません
・ どのような場合にどの治療法を選択すべきか
・ 投与量、投与期間
・ 免疫治療を行ったほうが良いのかどうかの、適応基準
など必要とされます。
4)治療の効果判定
治療の効果判定として、てんかん発作の消失は当然ではありますが、それは治療目標であり、臨床的には治療効果判定の参考となるマーカーが必要です。
・脳波所見
・抗体値の正常化
・MRI画像の正常化
・PET代謝異常の正常化
など指標として用いるべきマーカー、指標として適していないマーカーの選別が今後必要となります。
<大事なこと>
自己免疫性てんかんにおいて最も重要なことは、担当医が「自己免疫性」を鑑別に入れることです。
免疫介在性の背景の有無で、治療方針・長期的展望において、異なるため重要となります。
てんかんと初期診断した場合には、発作分類、症候群分類を行う必要がありますので、その際には病因が何であるのかを初期診断で判断することが肝要です。
References
Toledano M. Britton JW. McKeon A et al Utility of an immunotherapy trial in evaluating patients with presumed autoimmune epilepsy. Neurology 82 1578-1586.2014
Quek A.M., Britton J.W., McKeon A. Autoimmune epilepsy: clinical characteristics and response to immunotherapy. Arch Neurol. May 2012;69(5):582–593.
Value of autoantibodies for prediction of treatment response in patients with autoimmune epilepsy: Review of the literature and suggestions for clinical management. Epilepsia, 54:48–55, 2013
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