自己免疫性てんかん 治療する? 治療しない?

自己免疫性てんかんは、てんかん領域で最近のトピックの一つです。
このブログでも何度か取り上げていますが、話題の「自己免疫てんかん」に関する新しい論文を紹介します。まずは、自己免疫性てんかんのおさらい
<自己免疫性てんかんが重要な理由>
1) てんかん患者さんの中に一定の割合で存在し、診断できていないケースが多い
2) 通常の抗てんかん薬では難治のことがある(難治てんかんとされているもののなかに自己免疫性てんかんが混在している)
3) 抗免疫治療が著効する場合がある
<自己免疫性てんかんを疑うべきポイント>
ポイントはいくつかの研究報告があり、診断スクリーニングとして用いられる予測スコア(神経抗体の予測スコア)も最近のJAMA neurology誌に報告されました。
つまり、どのような症例で、「自己免疫性てんかん」を疑い、「自己抗体(抗神経抗体)」のチェックをすべきか、ということに関しては、ある程度のコンセンサスが得られました。
ape__a.png
では、次のステップとして、「どのような症例で、抗免疫治療を試すべきか」という課題にさしかかります。
今回のEpilepsiaの論文では
免疫治療が奏功するかどうかの事前予測に関するスコアリングシステムを作成を試みました。
既報の抗体予測スコア:APE (Antibody Prevalence in Epilepsy) scoreを応用して(項目を追加して)、検証しています。
復習としてAPE (Antibody Prevalence in Epilepsy) score
・急性発症、進行性の意識レベルの変化、新規の発作出現
・興奮、活動的、感情的などの出現
・自律神経症状
・ウイルス性の先行感染(基礎疾患に悪性疾患がない場合に)
・Facial dyskinesias or faciobrachial dystonic
・2種類のAED使用でも発作が難治
・髄液での炎症所見
・MRIで内側側頭葉の信号変化
・基礎疾患に悪性疾患
でした。
詳細は過去記事を参照ください。
今回の「免疫治療が走行するかどうかの事前予測スコア」
RITA score(Response to Immunotherapy in Epilepsy score)として提唱しています。
RITA scoreは、APE scoreに以下の2項目を追加し計19点のスコアリングとしています。
・発症6ヶ月以内の免疫治療の導入
・抗神経抗体陽性

rite.png
APE RITE
<論文での検証内容>
・ Mayo clinicで抗体をチェックした387名のてんかん患者のうち、神経抗体が陽性だった44名と陰性だった343名の比較
・ 抗体陽性の44名について、APEスコアが抗体予測をできていたのか検証
・ 同387名のうち、免疫治療を受けた77名の患者を対象に、免疫治療の効果に関連する因子を検証(retrospective)
<APEスコアの抗体陽性事前予測に対する感度・特異度>
APE スコア4点以上は優位に神経抗体陽性率が高く(97.7% vs 21.6%)
APEスコア4点をカットオフにvalidation cohortで検証すると、神経抗体陽性に対するAPEスコアの感度は97.7%で、特異度は77.9%だった。
<免疫治療の奏功に関連した患者因子>
(免疫治療を受けた77名で評価し、治療奏功は50%以上の発作減少と定義)
・自律神経症状
・FBDS
・早期の免疫治療の導入
・神経抗体陽性

がresponderに関連した因子だった。
responder.png
<免疫治療の奏功に関するスコア>
RITA score:Response to Immunotherapy in Epilepsy scoreに関して、免疫治療を受けた77名で評価した。
RITEスコアが7点以上の場合の、responderに対する感度・特異度は
感度:87.5%
特異度:83.8%


<論文を通して>

APEスコアの有効性に関する検証により、APEスコアの精度は高い(高い感度)ことが改めてわかり、スクリーニングとしては非常に有効。
治療に関しては、まだ結論付けるのは早いでしょう。その理由として
・retrospectiveな検証
・対照患者が少なく
・抗体の種類での差などは検証されていない
などがしてきできますが、そもそも抗体陽性のてんかん患者を抽出すること自体、決して容易ではありませんので、体系的に検証できている点は、頭が上がりません(さすがはMayo Clinic)。今後の追試が期待されますが、少なくともRITEスコアが現段階で一つの判断目安にはなるのではないかと思います。
<大事なこと>
APEスコアを用いて、自己免疫性てんかんのスクリーニングを行う
RITEスコアを参考に、免疫治療の適応があるかどうか吟味する
References:
1) Dubey, D., Singh, J., Britton, J. W., et al. (2017), Predictive models in the diagnosis and treatment of autoimmune epilepsy. Epilepsia. doi:10.1111/epi.13797
2) Dubey D, Alqallaf A, Hays R, Freeman M, Chen K, Ding K, Agostini M, Vernino S. Neurological Autoantibody Prevalence in Epilepsy of Unknown Etiology. JAMA Neurol. Published online February 06, 2017.
3) Dubey D, Sawhney A, Greenberg B, et al. The spectrum of autoimmune encephalopathies. J Neuroimmunol. 2015;287:93-97
4) Brenner T, Sills GJ, Hart Y, et al. Prevalence of neurologic autoantibodies in cohorts of patients with new and established epilepsy. Epilepsia. 2013;
54(6):1028-1035.
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