むかし頭をぶつけたことはてんかんに関係ありますか?

外来で「小さい時にベットから落ちて頭をぶつけたんですが、関係があるんでしょうか?」という質問をよく受けます。
頭部外傷は、様々な脳疾患のリスク因子です。例えばALSやアルツハイマー病などの変性疾患でも知られています。
てんかんについては、脳挫傷など脳に器質的な障害を呈した場合はもちろんてんかん発症のリスクとなります。
ですが器質的な障害のない頭部外傷もたくさんあります。軽度から重度まで含めた頭部外傷の将来のてんかんのリスクはどうなのでしょうか?
今回の論文では65歳以上を対象(8872名)に過去の頭部外傷とその後のてんかん発症との関連性をレセプトデータ等のビッグデータを用いて検証しています。
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頭部外傷は、少なくとも頭蓋骨や顔面などの骨折を呈したもの、としているようです。重症度としては、意識障害の有無や、頭蓋内出血の有無などで細かく評価され、軽度、中等度、重度で分類されています。
結論を先に述べますと
「頭部外傷は軽度であっても、将来のてんかん発症のリスクになる」ようです。また、外傷の重症度が高まればリスクはさらに増大し、また頭部外傷の回数が増えるほどリスクが増大することも示されています。
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なお頭部外傷のデータの抽出はデータベースからの抽出に加えて、自己申告での質問(医師・病院の治療を必要とする頭部外傷の経験、意識消失、頭部外傷の経験回数、頭部外傷を受けた年など)データを用いたようです。
主な結果:
将来のてんかんのリスクとしてのはハザード比(HR)は、交絡因子で調整後
・全体:HR 1.88(95%信頼区間[CI]1.44-2.43)
・頭部外傷の既往が1回の場合:HR 1.37,95% CI 1.01-1.88
・2回以上の場合:HR 3.55,95% CI 2.51-5.02
・軽度外傷:HR 2.53,95% CI 1.83-3.49(頭部外傷なしと比べて)
・中度/重度の外傷: HR 4.90,95% CI 3.15-7.64 (頭部外傷なしと比べて)
なお頭部外傷を受けた時期については
・高齢で受けた頭部外傷(67歳以上:HR 4.01、95%CI 2.91-5.54)は有意だったものの
・若年で受けた頭部外傷(67歳未満:HR 0.98、95%CI 0.68-1.41)は有意でなかった
ようです。高齢者での頭部外傷は硬膜下血腫など、短期的には注意が必要ですが、中長期的にはてんかんの発症リスクにも注視する必要がありそうです。外傷を避けるに越したことはありませんが。
まとめ:
高齢者となって発症するてんかんのリスク増加は頭部外傷と関連していることが示され、そのリスクは頭部外傷の回数が多いほど、また重度になるほど増大することが示されていいます。
Reference:
Neurology Feb 2022, 98 (8) e808-e817; DOI:10.1212/WNL.0000000000013214
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