高齢者てんかんシリーズ その1 –TEAとTGA–

てんかんの60歳以上の有病率は1.5%とされていますが、超高齢化社会を迎えた日本での有病率(高齢者てんかんの有病率)はもっと高いことが予測されます。
高齢者てんかんは、一般内科、救急診療でも精通する必要性の高い分野ですので、シリーズで紹介していきたいと思います。
高齢者てんかんシリーズ 初回は
TGA(transient global amnesia)

TEA (transient epileptic amnesia)
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一過性全健忘(TGA:transient global amnesia)はしばしば救急外来で遭遇すると思います。
主症状は急性の記憶障害です。高齢者に多く、多くの主訴は「突然、同じことばかり質問して、急に認知症にでもなったのではないか」と家人が心配して病院を受診させます。もちろん、鑑別には脳卒中をはじめとして急性期疾患の検索が必要です。
血液検査、心電図、血液ガス、尿検査、胸部レントゲン、頭部CT、頭部MRI(海馬に微細な信号変化をDWIで認めることあり)など、救急でのスクリーニングで特に異常が見つからない「急性の記憶障害」の場合にTGAが鑑別にあがります。
多くは半日〜1日程度で、自然に回復されますので、一晩の経過観察入院にて、翌日には症状が軽快していることが殆どです。
TGAは再発率が低いですが、TGAと診断した場合には、TEAの可能性も検討する必要があるため、稀な病態ではありますがTEAを紹介したいと思います。
TEAは中年後期に好発する発作性の健忘症状を呈する病態で、海馬に限局したてんかん発作と考えられています。
つまり、てんかん発作が海馬に限局しているがため、通常の側頭葉てんかんとは異なり、意識減損や自動症などを伴わず、健忘症状のみを呈するという、atypicalな側頭葉てんかんと考えるとよいと思います。
発作の持続時間,再発性,前向性健忘の障害度などでTEAとTGAは鑑別されます。TEAの病態はてんかんですから、再発する可能性があり、脳波異常も見られることがあります。
そのため、治療には抗てんかんAED薬(AED)での発作抑制が期待できます。ラモトリギン(LTG)やレベチラセタム(LEV)が高齢者では使いやすいとする意見もあります。
Bartsch T, Butler C. Transient amnesic syndromes. Nat Rev Neurol. 2013;9(2):86-97
Asadi-Pooya AA. Transient epileptic amnesia: a concise review. Epilepsy Behav. 2014;31:243-5.
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