知っておきたい診断特異性の高い「てんかん発作症候」 その1 

てんかんの診断には問診がとても重要です。
てんかん診断のために必要な知識、特に診断特異性の高い「てんかん発作症候」を知っておくことはとても重要です。
今回は、「この症状は、てんかんの診断においてとっても重要」という知識をご紹介したいと思います。たくさんありますので、今回はまず、その1ということで、けいれん発作 vs 失神 というテーマに絞って紹介したいと思います。
けいれん発作(ここではてんかん発作のこと)と失神は、意識消失する症候として鑑別はとても重要です。過去の臨床研究(The Lancet Neuro. 2006;5:171-180)では、臨床症候のスコアリングにより、けいれん発作 vs 失神 が鑑別に有用とする有名な論文がありますが、実臨床では(情報不足なこともあり)しばしば鑑別は困難です。
両者の主な鑑別点は以下の通りです。
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この中で、今回注目いただきたいのは、ずばり
「舌咬傷」
「舌咬傷」の存在自体は、発作の強さけいれんの存在の推定材料になるという点で重要で、けいれん発作として特異性の高い症候です。
意識消失発作で随伴して見られ場合の感度・尤度比ともに高値です(specificity 97.3%, likelihood ratio 16.5)。
ただし、失神でもけいれん性失神(convulsive syncope)を呈するこがありますので、注意が必要です。
一歩進んだ問診のためには、
意識消失発作で「舌咬傷」が見られた場合、以下の所見を必ず確認してください。
“ipsilateral tongue biting”
舌咬傷には左右差がある場合があります。
例えば、左大脳の運動野に起因したけいれんであれば、反対側(右側)のオトガイ舌筋(genioglossus muscle)がけいれんするため、舌は右側左側へ偏倚した状態で突出され、その結果、咬傷は左側(てんかん発作と同側)で生じることになります。
この“ipsilateral tongue biting”に再現性がある場合は、てんかん発作としての特異性が高いだけでなく、てんかん焦点の側方性に関する情報も得られることに大変重要です。
一歩進んだてんかん問診のため、けいれん発作があった場合は、
1) 舌咬傷の有無
2) その左右差の有無
3) 再現性があるか
確認してください。
初回発作であった場合は、「朝起きた時に、舌を噛んでいたことがなかったですか?」と聞きましょう。覚知されていない就寝中の全身けいれん発作の検索につながります。
references
Benbadis SR, et al.: Unilateral blinking: a lateralizing sign in partial seizures. Neurology. 1996;46(1):45-8.
Sheldon R, Rose S, Ritchie D, et al. Historical criteria that distinguish syncope from seizures. J Am Coll Cardiol 2002; 40: 142-148.
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