てんかん性放電や律動性波形の表現(脳波の用語の定義)

脳波の歴史は古いですが,用語の定義としては未だに国際的なコンセンサスの得られたものはありません.精神科,脳外科,神経内科など複数の診療科が関わっている点,脳波の判読は定量的な評価が困難である点など,背景にあると思います。
脳波の重鎮の先生が「これはspike」と言えば「spike」になる.というのが未だ実臨床の抱える問題でもあるように思います(若手の先生もdiscussionできるほど、脳波判読知識が周知されていない).
こうした中,2012年のACNS(American Clinical Neurophysiology Society’s)より,脳波の判読に必要な用語の定義が提唱されました.本日はその一部を紹介します.
用語が統一することで,非専門医が感じている脳波の判読の敷居の高さという問題が解決できると良いのですが,決して簡単ではないようです.
<Rhythmic pattern or periodic pattern>
まずは律動性あるいは反復性の活動に関する記載法です.分類には以下の3ステップが必要です.
(1)出現様式の分類
(2)メインとなっている活動波の分類
(3)付加情報
を組み合わせることで区分します.(1)と(2)の分類を以下に示しています.例えば,両側同期生のてんかん性放電が一定の周期で出現するようなら“Generalized periodic discharges (GPDs)”と表現し,
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一側半球性に出源するようなら“Lateralized periodic discharges (LPDs)”と記載します.
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(1)出現様式の分類と定義
・ Generalized(G:全般化);両側性,両側同期生,左右対称性の所見のいずれかで,両側前頭部など限局的であってもよい
・ Lateralized(L:半球性);一側の半球性,あるいは両側同期生でも左右非対称性
・ Bilateral Independent(BI両側性);少なくとも2つの独立した半球性
・ Multiforcal(Mf:多焦点性);一側半球に少なくとも3個以上の独立した半球性の所見
(2)メインの活動波の分類と定義
・ Periodic discharges
“periodic”は類似した形態の波形が一定のintervalで繰り替えし出現する状態.“discharges”はてんかん性放電の「放電」に該当する単語で、定義としては3相性までの一過性波形,あるいは持続が0.5秒まで.より持続性のある波形(0.5秒以上)を“burst”と呼ぶ.
・ Rhythmic Delta Activity (RDA)
“rhythmic”とは,同一形態の波形が持続性に出現する状態で(periodicと異なりintervalを有さない).サイナスカーブを描く波形が持続する状態は綺麗なRhythmic activityと言える.
・ Spike-and-wave or Sharp-and-wave
“spike”成分と後続する“after-slow”成分で構成される波形.Spike-and-waveはランダムに出現するため,Periodic dischargesのような周期性は有さない.
(3)付加情報
典型波形の詳細を可能な限り記載します.具体的には,「出現率」「持続時間」「周波数」「振幅」「spike成分の尖り具合」「極性」などです.Spike成分は70ms未満と短ければspikyと記載し,70−200msであればsharpと記載します.シータやデルタのrangeであっても尖っていれば,sharplyと記載します.
American Clinical Neurophysiology Society’s Standardized Critical Care EEG Terminology: 2012 version
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