Nature論文に学ぶ:高周波律動(HFO)とパーキンソン病とエヴァンゲリオン

パーキンソン病では脳深部刺激療法(DBS)という治療法があります.DBSは内服薬などでは改善が期待できない運動症状や合併症に対して有効な治療オプションなのですが,そのメカニズムはよくわかっていません.わかっていないのだけど,一定の患者さんには著効するので現在もパーキンソン病の治療の重要なオプションの一つなのです.
DBSのメカニズムに関するNature論文を紹介します.
odweb.huc.hiroshima-u.ac.jp/pcsweb/playlist.do?contentsCode=13188&time=1600071280839
パーキンソン病患者にDBSの手術を行い,視床下核を治療的周波数および非治療的な周波数で電気刺激を行い,それによって生じる局所電位の変化を比較したようです.
f江vrp→でv
その結果,治療的な高周波刺激(130~180Hz)では,高周波振動(~300Hz,HFO)が誘発されました.HFO high frequency oscillationとはてんかん領域でも10年前くらいから注目されている脳波の共振現象ですが,近年ではパーキンソン病の病態解明などでも報告が増えています.
このHFOは薬物療法でも同様に見られた一方で,周波数の低い非治療的な周波数で電気刺激ではこのHFOは認められませんでした.つまり治療レベルの刺激周波数である高周波刺激(130~180Hz)でHFOが出現したことは,DBSの刺激の有効性を裏付ける根拠になったようです.
またこの研究では,HFOに加えて,各刺激パルス後には誘発複合活動(ECA)というものが観察されています.ECAは治療的な刺激でも非治療的な刺激(20Hz)でも観察されたようですので特異的な現象ではないのかと思いきや,治療的な周波数で誘発されたHFOとそれに伴うECAは有意にこのHFOと共振(シンクロ)していました.
dんhcanぢxdw
さらにHFOのパワーの相対的な増強度は,ECAの位相と刺激パルスの相互作用に関連していたことも明らかとしています.
cefnvhx.png
以上のことから高周波刺激でのSTN-DBSが,薬物治療と同様に神経振動を治療状態に調整し,この振動を最大化する刺激周波数は,個々の被験者のECA波形の位相から推測できるのではないか,と論じています.
刺激で誘発されたHFOは,PD症状を引き起こす機能不全回路の再構築していく過程を示すマーカーではないか,と言えるのでしょうか.
脳波では神経活動同士が共振(シンクロ)することoscillationと言います.パーキンソン病ではシンクロの状態が悪いので,運動異常が出ているのだろうと思います.そしてその状態の悪いシンクロを,状態の良いシンクロ状況にしてくれるのがDBSなのでしょうか.
状態の良い・悪いシンクロ状況という単語を聞くと、エヴァンゲリオンというアニメでシンクロ率というのがあったな?ということを思い出しました.あれもシンクロ率が高まると強くなる?あまり詳しくないので間違っていたらファンの方すみません…

コメント

タイトルとURLをコピーしました