抗てんかん薬の副作用(コレステロール値や骨粗しょう症は気にしていますか?)

抗てんかん薬の長期的な副作用についてです
抗てんかん薬(AED)は副作用に注意が必要な薬剤の一つですし、その副作用を理解することは大変重要です。
その理由にAED使用に際しては、
1) 薬疹など重篤な急性反応が見られること
2) 副作用なくてんかん発作を抑制することが治療目的であるため
3) AED治療は長期化することも多く
4) 注意しないと気がつかない目立たない副作用もある
神経症状と検索と同じように、AED服用中には、注意して探さないと気がつかない副作用もあるため、各薬剤に該当し得る副作用を把握しておく必要があります。
<AEDの副作用は、3分類される>
AEDの副作用は、その病態・出現様式から以下の3つに分類されます。
1:急性過敏反応(薬剤への過敏反応)
2:用量依存性の副作用
3:長期使用による副作用
この3分類で分けて整理することで理解しやすく、またAEDの作用機序別が同じ薬剤はその副作用も類似していますので、整理しやすいです。
aedaed.png
<1:急性過敏反応(薬剤への過敏反応)>
おもに薬疹、急性肝障害、血球減少などです。
特に薬疹は、重篤なものとして
・ 薬剤過敏性症候群(DIHS)
・ 中毒性表皮壊死症(TEN)
・ Steven-Johnson症候群(SJS)

などがあり、初期症状の段階で薬剤の中止、必要に応じて皮膚科にコンサルとなどの対応を要します。
<2:用量依存性の副作用>
言葉通り、用量を増やすことで出現しやすくなる副作用のことで、「眠気や倦怠感、めまい」などが代表格です。
・ 用量依存性の副作用が出現時は、薬剤用量を減らすことで、副作用症状は緩和するか消失するという性質を持ち
・ 予防や対策としては、少量から、ゆっくり漸増すること
・ 精神症状は特に注意が必要:ゾニサミド、トピラマート、レベチセタムなどが代表格です。

<3:長期使用による副作用>

アレビアチンの長期使用で神経障害(脳萎縮)が見られるのは有名だと思いますが、その他のAED長期使用で注意が必要な副作用は以外と知られていません。
最近では、骨代謝と脂質代謝への影響が注目されています。
つまり、一部の抗てんかん薬は、その長期使用の影響で
・ 骨粗しょう症
・ 高コレステロール血症(脂質代謝異常症)

になってしまうということです。
これは既存のAEDに多く、新規の抗てんかん薬では基本的に見られない副作用です。
・骨粗しょう症
てんかん患者さんの場合、てんかん発作を契機に(けいれん発作や転倒で)骨折してしまうかもしれません。また高齢者てんかんの場合は、高齢による骨粗しょう症に加えて、薬剤が骨代謝障害を加速させているかもしれません。症例に応じて骨密度を図ることも検討が必要でしょう。
高コレステロール血症(脂質代謝異常症)
これが長期化すれば(AEDは長期間服用するので)、心筋梗塞や脳梗塞など、血管虚血のリスクが高まりますので、長期使用する場合には注意が必要です。
例えば、
テグレトール+スタチン(メバロチンや、クレストール、など)のセットで服用されている患者さんをたまに見かけます。
もちろん、コレステロール値は薬の副作用だけではないかもしれませんが、その可能性については常に注意が必要でしょうか。既存の抗てんかん薬でなければいけないのか、変更が可能なのか、なども検討も必要でしょうか。
副作用はあげればきりがないですが、主治医・患者がともに知っておくこと(共有しておくこと)が何よりも大事だと思います。
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コメント

  1. とら子 より:

    SECRET: 0
    PASS: 1b7d180742e97515a306d48de4bf4a99
    はじめまして。
    いきなりの質問失礼します。
    記事からは少し離れますが
    薬剤関係ということで質問させてください。
    プロトンポンプ阻害剤とフェニトインの飲み合わせについてです。
    プロトンポンプ阻害剤の添付文書に
    フェニトインの血中濃度を上げる場合があり
    「併用注意」との記載がありました。
    (唯一、パリエットだけは記載なし)
    自分は、フェニトインを飲んでいます。
    逆流性食道炎となり薬を内科で処方してもらいましたが
    上記の件で少々不安になり
    H2ブロッカーを出してもらいました。
    先日
    飲み合わせに関して
    てんかんの主治医に聞いてみましたが
    経験がなく分からないとのことでした。
    先生のご意見をお聞かせいただけましたら幸いです。

  2. りなも より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    お問い合わせありがとうございます。
    例えば、プロトンポンプ阻害薬のオメプラゾールに関しては、併用注意薬としてフェニトイン(アレビアチン)があげられています。併用することでアレビアチンの作用が増強する可能性があるためです。アレビアチンの血中濃度を測定することにより、この問題を回避することは可能だとは思いますが(問題のない至適用量に調整することは可能だとは思いますが)、お薬の代謝は毎日同じようになされているわけではありませんので、「併用注意薬」の組み合わせをあえて選択する必要はあまりないと思います。
    てんかんの薬であれば、アレビアチン以外に数多ありますので、変更は可能だと思いますし、胃薬の方でもH2bへ変更されたように、代用可能なものがたくさんございますので。アレビアチンは発作抑制作用はしっかりした古き良き薬剤ですが、やはり長期服用での副作用が懸念される薬剤でもあると思います。参考となりますでしょうか?
    なにかございましたらいつでもどうぞよろしくお願いいたします。
    > はじめまして。
    > いきなりの質問失礼します。
    >
    > 記事からは少し離れますが
    > 薬剤関係ということで質問させてください。
    >
    > プロトンポンプ阻害剤とフェニトインの飲み合わせについてです。
    >
    > プロトンポンプ阻害剤の添付文書に
    > フェニトインの血中濃度を上げる場合があり
    > 「併用注意」との記載がありました。
    > (唯一、パリエットだけは記載なし)
    >
    > 自分は、フェニトインを飲んでいます。
    > 逆流性食道炎となり薬を内科で処方してもらいましたが
    > 上記の件で少々不安になり
    > H2ブロッカーを出してもらいました。
    >
    > 先日
    > 飲み合わせに関して
    > てんかんの主治医に聞いてみましたが
    > 経験がなく分からないとのことでした。
    >
    >
    > 先生のご意見をお聞かせいただけましたら幸いです。

  3. とら子 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    丁寧で分かりやすい回答をありがとうございました。
    イーケプラも合わせて飲んでおりまして
    一度、主治医と相談してアレビアチンを止めて
    イーケプラだけにしてみたことがあるのですが
    発作が出てしまい
    アレビアチンを戻した経緯がありまして。。。(ため息)
    今後もこちらのブログでいろいろ勉強させていただきたいと
    思っています。
    ありがとうございました!

  4. りなも より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いつもブログを応援くださりありがとうございます。またなにかございましたら、いつでもどうぞ。
    「てんかん内科 Clinical epilepsy」というアカウント名で、facebookとツイッターをそれぞれしていますので、よろしければそちらもご覧いただけますと幸いです(当ブログと内容はほぼ同一ですが)。

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