進行性ミオクローヌスてんかんとペランパネル(フィコンパ)

ペランパネルは、進行性ミオクローヌスてんかんに、著効する可能性が期待できる薬剤のようです。
ペランパネルは、2016年5月より発売された新規の抗てんかん薬です。
これまでにない作用機序のAEDとして、てんかんのみならず神経内科領域において、注目されています。
今回は、このペランパネル(商品名:フィコンパ)と進行性ミオクローヌスてんかんに関する報告を紹介します。
そもそも、ペランパネル(フィコンパ)は、
新しい作用機序(AMPA型グルタミン酸受容体への選択的な非競合的拮抗作用)のAEDとして登場し、その適応疾患は、
「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む) 、強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」
とされています。
この薬剤は、進行性ミオクローヌスてんかんの中でのLafora病において、そのてんかん発作やミオクローヌスに著効したという報告が以前あり、ペランパネル(フィコンパ)の幅広い有効性が注目されていました
では、Lafora病以外の進行性ミオクローヌスてんかんでは、どうなの?
というclinical questionに基づき、
この進行性ミオクローヌスてんかんという症候群の中でもUnverricht-Lundborg病(ULD)に、このペランパネルを使用した結果を報告した論文になります。
つまり、
進行性ミオクローヌスてんかんの中でも難治の部類に該当するLafora病で、『ペランパネル(フィコンパ)追加投与』が有効であったのなら、他の進行性ミオクローヌスてんかんでもペランパネル(フィコンパ)を試してみよう?ということです。
12人の進行性ミオクローヌスてんかん患者さんに、『ペランパネル(フィコンパ)の追加投与』を行い、ミオクローヌスとてんかん発作に対して有効性を評価しています。
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<結果>
12人の進行性ミオクローヌスてんかんの患者さんに使用した結果
ミオクローヌス:12人中、10人(80%)で改善あり
        5人は併用中のAEDを減らすことができた。

てんかん発作:6人中6人(100%)で発作消失
(ミオクロニー発作あるいは大発作が見られていた6名全てで、発作消失)

・観察期間は7−18ヶ月
マイナス面、副作用:
・体重減少は50%に見られた
・精神面での副作用は50%であり(ペランパネル減量や中止により改善)

特にミオクローヌスへの改善については
・ 少量から開始後、迅速に改善した例があり
・ 車椅子生活だった7名のうち、3名はミオクローヌス改善で歩けるようになり2名は移乗ができるようになった。
・ ミオクローヌスの改善があった患者(全体の80%)は全例で、発語、嚥下、手指の動き、に改善を自覚した
<良い結果だけまとめると>
Lafora病でペランパネル追加投与したら、ミオクローヌスは大半で改善し、歩けなかった人が歩けるようになるなどの大きな変化があり、てんかん発作は全例で消失した。
また、数名の患者はペランパネル2mg/dayですでに効果が見られていた。
これらのことから、
「従前の治療でコントロール不良ULD患者に対して、まずは少量のペランパネルで、増量せずに、その反応性だけでも確認することが良いのでは?」
ということが提案されます。
<注意点>
そもそも、この報告は、薬剤の有効性を検証・立証するためにデザインされた臨床研究ではありません。いわゆる、新規薬剤の使用経験を報告したすぎませんので、ペランパネルが本当に進行性ミオクローヌスてんかんに有効であることを科学的に立証されたわけではありません(医学論文を読まれる方にとっては釈迦に説法ですが、一般の方が誤解されてはいけませんので)。
ただし、
これは進行性ミオクローヌスてんかんという、非常に稀な症候群についての問題であり、
・多くは薬剤抵抗性である「ミオクオーヌスやてんかん大発作」が著効するかもしれない
患者さん、あるいは介護者のQOLが改善するかもしれない
車椅子の方が、歩けるようになるのかもしれない

といった重要な事項に触れている問題です。
このような使用実績報告が、インパクトのあるjournalに投稿されたことは大変貴重なことであり、臨床医はこのような報告を慎重に丁寧に吟味・解釈して、実臨床に生かしていく必要があると思います。
「もうこのミオクローヌスは止められない」
「てんかんは治らない」

そう言われて、諦めてしまった患者さんがいるかもしれません。
あるいは、ミオクローヌスが止まらず、歩くことを諦めた患者さんがいるかもしれません。
そのような患者さんの一部に、新たな治療選択(一筋の光)の提案ができるかもしれない、と感じました。
日本人は外国人と比較すれば体格が小さいですし、特に対象となる患者さんはすでに複数のAEDを服用中のことと思いますので、ペランパネルのadd onに関しては

・ ごく少量からの導入
・ 通常よりさらに緩徐な漸増

することが、継続性・忍容性という点でも重要ではないかと考えます。これまでの論文や学会報告などでも、添付文章での開始量よりもより少量で緩徐に導入することを提案する意見が散見されます。
<大事なこと>
・ ペランパネルは新しい作用機序の抗てんかん薬
・ 進行性ミオクローヌスてんかんの一部で著効した使用経験報告が散見される
・ 少量から効果が出る傾向があるようであり、対象疾患では、ごく少量でまずは試す価値があるのかもしれない

References:
French JA, Krauss GL, Wechsler RT, et al. Perampanel for tonic-clonic seizures in idiopathic generalized epilepsy. A randomized trial. Neurology 2015;85:950–957.
Schorlemmer K, Bauer S, Belke M, et al. Sustained seizure remission on perampanel in progressive myoclonic epilepsy (Lafora disease). Epilepsy Behav Case Rep 2013;1:118–121.
Arielle Crespel, Philippe Gelisse, Ngoc Phuong Loc Tang, and Pierre Genton
Perampanel in 12 patients with Unverricht-Lundborg disease. Epilepsia, 58(4):543–547, 2017
Goldsmith D, Minassian BA:Efficacy and tolerability of perampanel in ten patients with Lafora disease. Epilepsy Behav 62:132-135, 2016.
Steinhoff BJ, Bacher M, et al:Add-on perampanel in Lance-Adams syndrome. Epilepsy Behav Case Rep 6:28-29, 2016.
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