Lance−Adams症候群は蘇生後脳症(低酸素脳症)に伴った不随運動(ミオクローヌス)を呈する病態を総称します.
神経内科医であれば,この不随運動の治療に関して,一度はコンサルトを受けたことがあると思います.
このミオクローヌスは皮質興奮生の病態(cortical myoclonus)で,てんかん原性のけいれん発作ではありませんが,治療としては抗てんかん薬が使用されます.
クロナゼパム(リボトリール)などが有効であることもありますが,しばしば薬剤抵抗生で,患者さんのQOL(生活の質)を低下る大きな問題です.
今回紹介する論文は,Lance−Adams症候群のcortical myoclonusに対して,perampanel(フィコンパ)が有効であったと報告しています.
症例は36歳男性で,ブルガタ症候群を原因とする心配停止後の低酸素脳症で薬剤抵抗生の皮質ミオクローヌスを呈していました.
頻発する不随運動のため車椅子生活を余儀なくされていたが,ペランパネルを開始後ミオクローヌスは消失したそうです.同薬剤の影響で傾眠傾向が見られたため中止すると,中止翌日からミオクローヌスが再出現.最終的にはペランパネルを再開して,ミオクローンスは消失し,薬剤の忍容生も得られたと報告しています(フィコンパとして2mgから開始し,4mgで維持).
ペランパネルは,AMPA受容体拮抗薬というこれまでにない抗てんかん作用機序を有する薬剤です.抗てんかん作用のスペクトラムは広く,特に難治の二次性全般化する部分発作への発作コントロールが優れているという利点があります.今回の報告は,抗てんかん作用以外の面が新たに注目されたものです.
Lance−Adams症候群以外でも,juvenile myoclonic epilepsy やLafora diseaseでも有効例の報告があるようです.
エキスパートオピニオンとして,車椅子生活だった蘇生後脳症の患者さんがペランパネル投与後に歩けるようになったとも聞きます.複数の抗てんかん薬を使用しても難治となったLance−Adams症候群は,神経内科としては限界を感じていましたが,コントロールしえる病態である可能性があり,今後さらなる報告や症例の蓄積が期待されます.
French JA, Krauss GL, Wechsler RT, Wang XF, DiVentura B, Brandt C, et al. Perampanel for tonic–clonic seizures in idiopathic generalized epilepsy. A random- ized trial. Neurology 2015;85:950–7.
Dirani M, Nasreddine W, Abdulla F, Beydoun A. Seizure control and improvement of neurological dysfunction in Lafora disease with perampanel. Epilepsy Behav Case Rep 2014;2:164–6.
Schorlemmer K, Bauer S, Belke M, Hermsen A, Klein RM, Reif PS, et al. Sustained sei- zure remission on perampanel in progressive myoclonic epilepsy (Lafora disease). Epilepsy Behav Case Rep 2013;1:118–21.
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