後頭部優位律動の「優位律動って何?」

後頭部「優位律動」:基本に立ち返る

後頭部優位律動は、脳波の基本中の基本
脳波の判読を始めた人であれば、誰でも単語としては知っている「後頭部優位律動」ですが、正しく評価することはもちろん大事で、そもそも「後頭部優位律動」をなぜ評価しないといけないのか、という根本的なことも知っておく必要はあるかと思います。
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後頭部優位律動という単語ではなく「優位律動」

そもそも誤解が多い点は「後頭部優位律動」という単語は「優位律動」が「後頭部」で見られている状態を意味する単語であるということです。つまり「後頭部優位律動」もあれば「前頭部優位律動」という単語も成立しえます。混乱しないために順をおって説明します。
優位律動とは

「優位律動」とは「時間的に最も多く出現する律動」のことです。つまり、一枚の脳波の中で、最も優位に(最も長い時間で)認めている律動(つまり周波数)のことです。脳波1ページの中で、α波が占める割合が最も多ければ、その1ページの脳波の優位律動はα波になりますし、全体にβ波が主体で見られているのであれば優位律動はβ波となります。
そして、その優位律動の局在が後頭部にあれば「優位律動はαあるいはβ波で後頭部に見られています(後頭部優位律動はαあるいはβ波)」と表現されることになります。睡眠中の脳波の優位律動は?と聞かれれば、それはα波ではなく、もっと遅い周波数としてのデルタ波であることもあるし、その分布の後頭部ではなく中心部だったりしますので、
結局「優位律動」というのは、そのときの覚醒度や脳の状況に応じて変化する脳波の中でどの周波数が優位な状況であるのかを示すツールに過ぎません
優位律動の評価の必要性

ではなぜ、優位律動の評価が必要かというと、
この優位律動は、正常脳であれば「安静閉眼時に後頭部を中心としてα波が見られること」が知られているからであり、この状態が正しく見られていることで、脳機能(脳の統合性・組織性など)がある程度正常に保たれているのだろうと評価できる条件の一つになるからです。
安静閉眼時の脳は自動車エンジンで言うニュートラルの状態。正常なエンジンであれば、ニュートラルの状態であればエンジンの回転数は抑えられていると思います。逆に、ニュートラル中にもかかわらずエンジンが1000や2000回転していれば何か問題があるかもしれません。つまり、脳が安静閉眼時にきちんとニュートラルの状態でいられているか?をチェックすることが後頭部優位律動を評価する主な目的の一つになるのです。
安静閉眼時の優位律動が正常である条件:

・α波が優位律動であること
・その優位律動が後頭部中心であること(parietalまで含まれてよい)
・十分覚醒している状況での評価であること
・waxing & waningがあり
・左右差がなく
・持続性があり 

改めて先ほどの脳波を見てみましょう
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前半1/3過ぎたところで閉眼しており、それ以降の脳波で言えば、最も優位に認める律動は(最も目立って持続している律動波)はα波であり、その分布は後頭部にあります(O1とO2)。持続もしており、waxing & waningもあり、明らかな左右差はありません。眠気があるような脳波変化はありませんし、Fp1とFp2の挙動からも、しっかり覚醒しているといえます。
ちなみに、この顔面の左側は開眼中ですが、小さな振幅でのβ波が両側前頭部か中心部にありますので、この左1/3だけで言えば優位律動はβ波と言っても良いでしょう。
この安静閉眼時の優位律動は、脳全体としての統合性(connectivity)あるいは組織化(organization)を反映するため、その評価は重要であり脳波判読の基本でもあります。
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