誰がてんかん外科治療を受けるべき?

てんかんの外科治療、の話です。一体、どのような患者さんがてんかん外科治療を受けるのでしょうか??
てんかんの治療は至ってシンプルです。
1) 抗てんかん薬の内服治療
2) 内服治療で難治なら、てんかん外科治療
原則はこれだけです。至ってシンプルです。
シンプルだからこそ大事なことがあります、それは
適切な診断のもと
適切な抗てんかん薬を
適切な量で治療し
適切な観察期間で、難治かどうか判定する

ということになります。
具体的には
1) てんかん分類、発作分類を診断する
2) 新規の抗てんかん薬を含めた1−2種類で
3) 血中濃度の確認も行い
4) 1−2年で、難治てんかんかどうか判断する

ということになります。
<なぜ、難治かどうか判断しなければいけないか>
内服薬で止まらないてんかん発作があれば「てんかん外科」の治療を検討しなければいけないからです。また「てんかん外科治療」はいつでも受けられるというわけではありません。
外科手術の「適切なタイミング」というものがあります。
<治療開始後から、外科手術まで>
また「てんかん外科治療」は、受けたいと申し出ても、すぐにできるものではありません。脳を切除するわけですから、手術前にはたくさんの検査が必要となります。本当に切除していいのかどうか、あらゆる評価を行います。具体的には
・脳MRI
・脳血流SPECTあるいはFDG−PET検査
・ビデオ脳波モニタリング
・脳磁図
・Wadaテスト
・神経心理検査

などです。手術までに検査入院を2−3回行うこともあります。
<てんかんの治療開始〜てんかん外科治療まで>
いろんなケースがありますが、てんかんの焦点が脳機能の大事な場所(例えば言語や手足の運動機能など)と近いような状況であれば、術前の精査はとても大事。
例えば成人てんかんにおけるてんかん外科治療の場合
・内服薬の効果判定:1−2年
・外科的治療前の術前精査:半年〜1年
・入院手術の時期決定:患者さん・家族の学校や仕事での都合
となることもあり、場合によっては年単位の話になるわけです。
このように、てんかんの場合、「手術したくても必ずしもすぐにできるわけではなく」、適応判断に1年以上を費やすこともあるため、担当医は「手術適応の検討を要する症例か」どうかを適切かつ迅速に判断する必要があります。
てんかんの診断・治療開始時点の最初の段階で、ある程度「この患者さんはおそらく手術になるだろう」と事前に分かっていれば、紹介のタイミングを見逃すことは少なくなるでしょう。
<この患者さんは将来、仮に難治となった場合に、すぐにてんかん外科に紹介したほうがよいか?>
この疑問に対する論文を紹介します。事前予測のためのスケールを作成しています。
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<Epilepsy Surgery Grading Scale (ESGS): てんかん外科グレーディングスケール>
以下の評価項目を用いて、どれだけ手術をしたほうが結果的に良かったかどうか、事前に予測できるスケールを提案し、検証しています。
評価項目:
1) IQ(70未満かどうか)
2) 発作時症状(片側の運動発作か)
3) MRI(片側の海馬硬化など)
4) 脳波(限局的か、両側性か)
5) MRIと脳波の側方性が一致しているか

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です。非常にシンプルで、問診、脳波、MRI、神経心理の検査だけで済んでしまいます。
Totalのスコアが8−10点:てんかん外科のよい適応(手術後の発作なしの可能性が高い)という予測
Totalのスコアが0−4点:手術後転機の期待はよいものではないことが予測されます。

もちろん、このスケールだけで、外科治療の適応を決めるわけではありませんし、今回はこの提案するスコアリングの妥当性を検証したにすぎません。そもそも
<スコアの内容>
「知能が保たれているか」
「てんかん焦点が一側に限局しているか」
「典型的な海馬硬化症による内側側頭葉てんかんか」
「脳波とMRIが矛盾しないか」

という点を見ているだけであり、これらの評価項目の内容的には日常臨床でてんかん専門医が考察しているものを超えるものではありません。
ただし、このようなシンプルな評価項目で、非専門医でも検証できるスコアリングという点では、てんかん外科への適切な紹介の妨げを防ぐという点では非常に大事なものだと思います。ご参考にされてください。
Reference
Derivation and initial validation of a surgical grading scale for the preliminary evaluation of adult patients with drug-resistant focal epilepsy. Epilepsia. 2017 May;58(5):792-800.
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