周期性パターンの異常脳波代表例はPLEDsやPSDです。
教科書的にはPLEDsといえばヘルペス脳炎をPSDといえばCJDの可能性が考えられ、重要な脳波所見です。
ただし、PSDやPLEDsは日本では周知されていますが、世界共通の用語ではありません。
PSD、PLEDsの定義や分類、そしてコンセンサスの得られた対応する用語を紹介します。
PLEDs (periodic lateralized epileptiform discharges)の定義
アメリカ臨床神経生理学会(ACNS)では、周期性一側てんかん性放電 Lateralized Periodic Discharges (LPDs)と称されています。
一側周期性放電が前提として、
1) 鋭波・棘波を含む一過性の放電で、一側半球に周期性(あるいは半周期性)に出現
2) 一側に出現(両側性の場合は左右独立して出現:bilateral independent periodic lateralized epileptiform discharges: BIPLEDs)
3) 急性・亜急性の重篤な局部の破壊性病変(急性の脳血管障害、急激に 増大する脳腫瘍、単純ヘルペス脳炎など)あるいは焦点性の強いてんかん性活動(非破壊性病変でも生じえる)で認める
4) 全般性の脳機能障害を通常伴う。
上記を満たすものとされます。
PLEDsは2種類に分類されます
1) PLEDs Plus :周期性放電間に、低振幅の律動的放電を伴ったPLEDs
2) PLEDs Proper :Plusに該当しないPLEDs
PLEDs Plusは臨床発作との関連性がPLEDs Properより高く、てんかん原性が高い所見と考えられています。
PLEDs を見た場合、低振幅の律動的放電(ベータ波など)が周期性放電間にみられないかか探すことが重要です。
PSD (periodic synchronous discharges)の定義
アメリカ臨床神経生理学会(ACNS)では、周期性一側てんかん性放電Generalized Periodic Discharges (GPDs)と称されています。
1) 周期性パターン(Periodic patterns)
2) 比較的定型的な波形 (通常はsharp waves)で、周期性あるいは半 周期性に出現
3) 通常は、急性あるいは亜急性の、高度の脳症を示唆
4) 反復する出現頻度と波形は、異なる病因毎の脳症に比較的特徴的
PSDs の原因としては,クロイツフェルト・ ヤコブ病や SSPE,急速進行性の脳腫瘍 / 脳膿瘍,低酸素脳症 などが挙げられ、PSDの出現する周期が2秒毎より高頻度:なら成人ではプリオン病、2秒毎より低頻度なら亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と区別可能なこともあります。
薬剤関連性に出現する場合もあり注意が必要です(炭酸リチウム、テオフィリン、抗菌薬(セフェピムが有名))。
内服歴と脳波で診断ができますので、意識障害の鑑別として重要です。
表;周期性放電を呈する脳波異常の分類と鑑別疾患
references:
Andraus ME, Periodic EEG patterns: importance of their recognition and clinical significance. Arq Neuropsiquiatr 2012;70:145-151.
Begum T. Rapid recovery from coma with multifocal PLEDs in a patient with severe dementia and transient hypoxemia. Intern Med 2006;45:823-826.
Hirch LJ et al., J Clin Neurophysiol. 22(2): 128-35, 2005.
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