ドイツの神経科学者ハンス・ベルガー(Hans Berger)が、初めてヒトでの脳波を報告してから、来年で90周年となります。
脳波は、もっとも歴史の古い臨床神経生理の検査の一つです。
1929年にHans Bergerが初めてヒト脳波を報告し、来年で90年目の節目となります。頭皮上脳波の研究は、1900年代後半まで非常に盛んに行われ、1900年代後半より頭蓋内(皮質脳波)の研究が進み、2000年代からデジタル脳波の普及に伴い、脳波の研究はさらに飛躍的な進歩を遂げました。
1Hz以下のような非常に遅い周波数から、500 Hzを超えるような非常に早い周波数帯域まで、しかも多元的に評価できるようになりました。
特に脳波が紙媒体であったころと比べれば、当時は見えていなかった脳内現象がより詳しく見えるようになりました。テクノロジーの進歩とともに、今後も脳波の解析手法はさらに進歩を遂げることが予測されます。
ところが、2010年代からは、臨床てんかんにおける脳波研究の進歩は大きな壁に差し当たっています。デジタル脳波の普及に伴い、飛躍的にこれまで見えていなかった脳内現象が見えるように確かになりはしましたが、その見えている脳波現象をどう臨床解釈すればよいのか、難しい局面に多々遭遇します。
例えばHFOは生理的にも出現すれることもあるし、てんかんでも出現します。より速い周波数のHFOのほうが病的である可能性が示唆されていますが、ではそのようなHFOを脳内で見た場合に、どこまでを黒とすべきか(切除すべきか)など、確実なことはわかっていません。
テクノロジーの進歩が早すぎて、その臨床応用としての解釈が追いついていないという問題を抱えているのです。
脳波は、脳内活動を電気生理学的に(つまり間接的に)評価しているにすぎませんので、見えている事象が何を意味し、どのように解釈すべきか、そしてどのように臨床応用されるべきか、ということが現行の脳波研究の大きな課題の一つと考えます。
生誕90年という節目を迎えますが、やはり一例一例の脳波を丁寧に評価し、症例の蓄積を進めていく作業を怠たらず、次の10年の脳波研究がさらに発展することを望むばかりです。そして、新しい脳波の時代のためには、やはりてんかん学の脳波の教育は必要不可欠と考えます。
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