自己免疫性てんかんのスクリーニング 診断スコアリング




 

過去の記事にも提示しましたように自己免疫性てんかんは注目されており、てんかん診療において今後もますます重要となることは明らかです。

 


<なぜ臨床的に重要なのか>

  難治てんかん」「原因不明てんかん」の中に潜んでいる可能性がある


  自己免疫性てんかんであれば、早期の免疫療法で発作コントロールが改善し得る

 

 


確立された診断基準はありませんが、その臨床的特徴は知られています。そのため臨床医は、「この症例はもしかすると自己免疫性てんかんかな?」と察することはあると思います。

 

ただし、実際に特殊採血(抗神経抗体の測定)を行うべきかどうか、判断に迷うこともあるでしょう。外注検査となり費用もかかり、闇雲に高額な検査を依頼することは推奨されません。

 

 


<clinical question:どのような症例で抗神経抗体の測定を行うべきか>

つまり抗神経抗体陽性の検査前確率を高めるためのスクリーニング方法があれば、診断精度を高められます。

 

 

今回の論文では、てんかんの抗神経抗体の事前予測スコアリングを行ったもので、9項目の臨床項目から算出するスコア(APE score; antibody prevalence in epilepsy score)を用いて、抗体陽性の感度・得意度を評価しました。

 


aep.png 



(文献1の表を翻訳)

 

 

ROC曲線での解析で、APE score 4点以上であれば、神経抗体陽性に対する感度(Sensitivity)・特異度(Specificity)は


Sensitivity82.6%

Specificity82.0%

AUC0.78

 

と報告しています。

 


このコホート研究は、単施設で、症例登録数は決して多くはありません



ただし、 

病因不明のてんかん患者における抗神経抗体の有病率をより忠実に評価するため、器質的疾患、代謝性、遺伝性などの病因が明らかな症例は除外したうえで病因不明のてんかん連続症例を前向きに登録しています(過去のretrospective study
で認めるselection biasなどの問題を解決した追試です)。

 

 


「どのようなてんかん患者さんで抗体測定をすべきか」

このclinical questionの答えにつながるものとして、上記表の臨床項目が少なくとも2−3項目該当することが必要条件になるようです。

スクリーニング(神経抗体陽性の検査前確率を高めるためのスクリーニング)として有用なスコアリングと思います。

 


なお、この評価項目には、てんかん診療の要となる脳波所見が含まれていません。自己免疫性てんかんに診断特異性の高い脳波所見はあるのでしょうか?今後のさらなる検証が必要とされています。

 

 

<大事なこと>

  自己免疫性てんかんの特徴を把握し、てんかん診療で常に鑑別に入れる


  APE score 4点以上あれば、抗神経抗体の検索を検討する

 

 

References:

1) Dubey D, Alqallaf A, Hays R, Freeman M,
Chen K, Ding K, Agostini M, Vernino S. Neurological Autoantibody Prevalence in
Epilepsy of Unknown Etiology. JAMA Neurol. Published online February 06,
2017.

2) Dubey D, Sawhney A, Greenberg B, et al. The spectrum of
autoimmune encephalopathies.
J Neuroimmunol. 2015;287:93-97

3) Brenner T, Sills GJ, Hart Y, et al. Prevalence of neurologic
autoantibodies in cohorts of patients with new and established epilepsy.
Epilepsia. 2013;

54(6):1028-1035.

 

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Key words: 自己免疫性てんかん、スコアリング、抗神経抗体、自律神経症状

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