てんかん焦点切除後の脳機能変容を呈したRoss症候群

てんかん焦点を切除したら、元々の右半身の発汗障害が「右半身」に変化した!?
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/059100646.pdf
てんかん外科治療の術後合併症の話です。
てんかん患者ではてんかん焦点およびその周辺領域に functional deficit zone (脳機能低下領域)がある。しかし、この「機能低下の程度」と「てんかん発作の活動性」の相関性や、さらには焦点部位以外への脳内ネットワークを介した影響などはまだ十分にわかっていない。
ところで、Ross 症候群とは「緊張性瞳孔」「腱反射低下・消失」「発汗異常」の3徴候を呈する原因不明の症候群だが、病初期の短期間にこれらの徴候全てが出そろうことは極めて稀で、多くは主要徴候の一つが出現したのち、数年から数十年の経過を経て他徴候が出現する。そのためその診断はしばしば困難で、遭遇機会も少ない。
今回のケースレポートでは、Ross 症候群が併存した難治左内側側頭葉てんかん患者で、てんかん外科治療としての言語優位側の側頭葉切除術を受けたのちにRoss 症候群としての自律神経障害の臨床像が変容した極めて稀な 1 例を報告している。
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具体的には、切除前にあった発汗障害の「側」が「左半身」から「右半身」へと変容した(左右が入れ替わった)。
長期的な治療経過・臨床症状の推移より考察するに、焦点部位以外への脳内ネットワークを介した影響によりRoss症候群の表現系の変容に至った可能性が示唆された。
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依然として原因不明であるRoss 症候群の背景病態を考察する上で貴重な症例であり、また Ross 症候群の多様性について臨床医・神経内科医 が理解する上で重要な症例と思われる。
ところで、ケースレポートは作成したことがあるものであればわかると思うが、結構大変な労力を要する。一般的な臨床研究より書くという作業は大変だったりする。また論文としてのいわゆるevidenceとしての価値は高くないため、「割に合わない」論文とも言えるのだが、その価値は非常に高く臨床家はやはりケースレポートを書かないといけない(と指導されてきた)。
ケースレポートのその本当の意味での価値は将来の研究により明らかになることもしばしばあり、書いた時点ではさほど重要と思わないものもあるかもしれないが、不思議な現象は、その不思議さを事実に即して忠実に記述することが肝要である。つまり、ケースレポートは書くことに意味があり、医学的な所見・証拠を記載して後世に残すことで、将来の医学の進歩につながることが期待される。
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