S−EEGという名の脳波

<脳内電極>
てんかん外科治療に際しては、脳を切除するのですが、脳をどこまで切除すればよいか検証する方法として「脳内電極」の留置があります。
脳表に直接、脳内電極を留置することで、脳活動を直接的に記録し解析することができます。
通常の頭皮上の脳波は、脳から出てくる脳活動のごく一部を拾っているにすぎませんので、この違いはかなり大きいのです。ただし、脳内に電極を入れることは決して安易にできることではありませんので、その適応というのも慎重に検討しなければいけません。
<S−EEG>
Stereotactic EEGといって、非常に細い針状の脳波電極を脳深部に差し込み、脳波を記録するものです。いわゆる脳内電極は、硬膜下電極のことを通常さし(これは脳表面に電極のシートを置くのですが)、このS−EEGは電極を置くのではなく、脳に刺しこむ電極になります。硬膜下電極と違って、脳の深部に電極を留置できるため、三次元的・空間的に広く脳内のネットワークを捉えることができます。
<危なくないのか?>
脳に刺しこむので当然脳への侵襲度が高いのではないかと思いますが、実は硬膜下電極より合併症は少ないとされ、術後の患者さんの負担も硬膜下電極よりだいぶ楽なのです。
<S−EEGの発作時脳波>
今回の紹介論文はこのS-EEGで認める発作時脳波変化の特徴を報告しています。
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400以上の発作を解析した結果、2種類の発作時変化の特徴があると報告しています。
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P−type(図左)とL−type(図右)と名付けられた発作時脳波の特徴的なpatternがあり、前者はあらゆる脳局在から出現する特性があるのに対して、L−typeは海馬由来の特異性が示されました。P−typeのPはπの形に似た脳波変化だからで、L−typeのLは持続時間が長いこと・limbicに由来することを語源としています。海馬という発作の増幅器となりえる特性がこのような間延びしたような長い持続をもつL−type の発作を起こしているだと推測されます。
引用文献:Epilepsia.2019;60:96–106.
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