てんかん治療の中核は抗てんかん薬(AED:anti-epileptic drug)の内服治療になります。てんかんと診断された患者さんの約7割弱は、一種類のAEDで発作が消失する1)と言われており、まずはてんかんの病型に応じた適切なAED選択が治療の第一歩です。
てんかんは慢性の脳疾患ですが、必ずしも生涯AEDが必要というわけではありません。
自然の経過で、発作コントロールが良好となり、AEDを漸減・中止が可能となる場合もあります。
てんかんの治療の目的は、「発作がゼロ」になること、そして患者さんの生活の質が良好に担保される(良好な社会生活が維持できる)ことと思います。
ただし、AED減量中に発作が再発してしまうことはしばしばあり、AED減量は慎重にする必要があります。
実際に、AED減量・中止後の発作再発率は12−66%とされ、報告によるばらつきがあります2)
今回のepilepsiaからの報告は
seizure free 4年の患者を対象に、AED中止後の再発状況について検証したものです。
発作が直近の4年間で見られなかったてんかん患者さんで、AEDを減量・中止を行った患者さんを対象(378人)に、発作再発の有無をretrospectiveに検討
・Early recurrence group:減量中の発作再発あり
・Late relapse group:AEDの完全中止後の発作再発あり
・Seizure free:中止後3年間で発作再発なし
に分類し、発作再発への関連因子をgroup間比較で検討した
1) seizure free 4年の患者で、AED中止後に、発作再発は64%に見られた
2) symptom duration(発作あり期間)>120日、発症時年齢<20歳、localization-related epilepsy(焦点性てんかん)は、発作再発のリスク因子
3) 単剤療法中であれば、SFとLR群との比較ではリスク因子なし
4) 13−18ヶ月で発作再発のピークあり(最初の1−2年は注意が必要)
というものでした。retrospectiveな報告ではありますが、てんかんの自然経過(無治療での再発率)を検証した重要な報告です。
「てんかんは治らない」と従来から一般認識されていましたが、必ずしもそうではありません。
現在では2014年(ILAE)のてんかんの臨床的定義3)を用いれば「10年間発作がなく,抗てんかん薬を少なくとも5年服用していない状況」を「てんかんは消失した(resolved)」と定義しています。
この期間に関しては今後も議論の余地はありますが、少なくとも患者にとって治療の目的意識を高める一つの目安にはなります。
なおresolved(消失)は remission(寛解)やcure(完治)とは同義でないことは、理解が必要です。
references 1−3)
Kwan P, Brodie MJ. Early identification of refractory epilepsy. N Engl
J Med 2000;342:314–319.
Schmidt D, Loscher W. Uncontrolled epilepsy following discontinua-
tion of antiepileptic drugs in seizure-free patients: a review of current
clinical experience. Acta Neurol Scand 2005;111:291–300.
Fisher RS, Acevedo C, Arzimanoglou A, et al. ILAE official report: a practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia 2014;55(4):475-482.
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